2020/12/02

高齢の家族に運動してもらいたい!健康寿命を伸ばす運動習慣のススメ

最近、健康寿命という言葉を耳にすることが増えました。
健康寿命とは、介護や病気などで日常生活が制限されることなく、自立した生活が送れる期間のことを言います。
医療の発展により、平均寿命が延びて、わたしたちはより長く生きられるようになりました。
せっかく長く生きられるならば、自分らしく健康に生活を送れる期間も長くしたいですよね。
また、高齢の家族が生き生きとしている姿を見ると、周りにいるわたしたちも元気をもらえます。

では、どうしたら健康寿命が延ばせるのでしょうか?
わたしたちがオススメするのは運動です。

今回はスポーツ医学総合センターの木村豪志先生に、健康寿命を伸ばすための運動について、お話を伺いました。

・そもそも運動はどうして大事なの?
・高齢の家族に運動をしてもらうためにできることは?
・高齢の家族にオススメのトレーニングは?

一緒に考えていきましょう!



木村豪志(きむら・たけし)先生

慶應義塾大学スポーツ医学総合センター 助教
慶應義塾大学院在学中 大学院研究テーマ:成長期のスポーツ傷害
テコンドー協会医科学委員
2006年 鹿児島大学歯学部卒業
2013年 鹿児島大学医学部卒業
日本歯科医師免許、日本整形外科学会認定専門医、IOC Diploma in Sports Medicine(国際オリンピック委員会認定ドクター)、日本整形外科学会認定スポーツ医・運動器リハビリテーション医、日本医師会認定産業医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター(履修中)
専門:小児スポーツ医学、高齢者スポーツ医学



なぜ運動が大事なの? 筋力低下が引き起こす転倒リスクと健康寿命の関係

木村先生「実は、高齢の方であっても、若年の人と同じように鍛えれば、同じように筋肉がつくんですよ

「年齢を重ねると筋肉ってつきづらくなるんじゃないの?」と思われたかもしれませんが、なんと、そうではありません。鍛えていれば、何歳であっても筋肉はつきます。
ただし、年齢が上がるにつれ、筋力が低下していく割合は増えていきます。つまり、筋肉を鍛えずそのままにしていると、若年層よりも筋力が落ちてしまうのです

特に、下肢と言われる太ももの大腿四頭筋やふくらはぎなどの筋肉は、筋力低下の割合が大きいと言われています。
下肢の筋力が低下すると起こること、それは転倒リスクの上昇です。

木村先生「転倒の恐ろしいところは、転んだことによる怪我だけではありません。転んだ結果骨が折れるなどして入院生活となってしまうことで、筋力がさらに低下し、元の生活に戻れなくなっていきます。すると自分で動けないことで食事が摂れなくなったり、歩いてトイレに行けなくなります。それによって合併症のリスクが高まり、健康寿命が短くなってしまいます」

転倒はそれ自体だけではなく、転倒がきっかけになって別の病気につながるのが怖いところなんですね

でも、ここで思い出してください。鍛えれば筋肉はその分つきます。大切なのは、筋肉ができるだけ減らないようにすること。
つまり、運動を継続することで、筋力の低下を抑え、転倒のリスクを軽減することができるのです


運動量は?内容は?痛みがあるときはどうする? 運動についての不安にお答えします

高齢者の転倒は怖いものですが、トレーニングを継続して筋力を保つことで予防することができます。
「運動が大切なのはわかったけれど、できるのか不安……」
そんな方のために、よくある運動についての不安にQ&A形式でお答えしてみたいと思います。

Q.どんな運動をどのくらい行えばいいですか?

A.トレーニングの内容は、本人にあったものがベストです。運動が苦手な方や、普段運動をされていない方へのオススメは散歩(ウォーキング)。前後のストレッチは念入りに行いましょう!内容以上に大切なことは、継続すること。最初は週に1度でも構いませんので、半年以上の継続をまずは目指してください。

Q.腰や膝の痛みが心配です。

A.慢性的な痛みがある方は、一度整形外科に相談してみましょう!痛みの原因を知ることはとても大切です。その上で、医師に痛い箇所の運動を避けるべきか、どのような運動が適しているか質問してみてください。目安として、運動していて同じ箇所の痛みが3日以上続いたら違う運動に変えてみましょう。

Q.運動するように声をかけてもなかなか続けてくれません。

A.継続するには、心理的要因が大きいと言われています。まずは、運動仲間ができる環境でトレーニングしてみるのはいかがでしょうか。スポーツジムを利用してもいいですし、コロナ禍の今は特に、公園で運動してみるのがオススメ。決まった時間に公園で運動することによって、顔見知りができ、コミュニケーションが生まれやすくなります。公園でも、ジムを利用する場合も、感染症対策はしっかりと!


転倒予防のための運動方法、オススメは散歩(ウォーキング)! 3つのメリットと継続のためのヒント

先ほどのQ&Aでお答えしたように、何からはじめていいか分からない方は、まず散歩(ウォーキング)からはじめてみてください。
運動があまり好きではない方、体に痛みがある方、三日坊主になりがちな方に特にオススメです。

ここで、散歩を日々の運動として取り入れるメリットを3つご紹介します。

1.はじめやすい!

散歩には特別な器具やウエアも必要ないためお金もかからず、また新しい動きを覚える必要もありません。道具を出したり、着替えたりといった手間が増えれば増えるほど、運動はおっくうになるもの。靴を履いて外に出るだけでできる散歩は、最もはじめやすい運動です。

2.習慣化しやすい!

先ほど、継続するには心理的要因が大きいとお話ししました。散歩に家族と出かけたり、いつものコースに顔なじみができると、コミュニケーションが生まれやすくなり、ぐっと習慣化しやすくなります。
また、「筋力がついたんじゃない?」「前よりずっと元気そうに見えるよ」など、客観的に指摘されることは、誰にとっても大きなモチベーションになります。もしご家族が一緒に散歩ができる状況であれば、ぜひそういったポジティブな会話を心がけてみてください。

3.調整しやすい!

膝や腰に痛みがある方でも、日によって調子が違うこともあるのではないでしょうか。
散歩であれば、「今日は調子がいいから少し早歩きにしてみよう」「膝が痛いし、ゆっくり歩いて早めに帰ってこよう」と、体調に合わせたコントロールが簡単です。また、歩くときに途中でスクワットなどの筋トレを組み入れて、強度をアップすることもできます。

このように、散歩やウォーキングには良い点がたくさんあります。1回30分、週に5日間を目標に、まずは半年間、継続してくださいね。もちろん、もっと沢山できそうならどんどん歩いてみましょう!


運動を習慣づけて健康寿命を伸ばそう!

運動の効果は、身体が強くなることだけではありません。筋肉がついたことから得られる達成感は、精神にも良い影響を与えます。運動を通して友人ができたり会話が生まれれば、孤立することなく社会やコミュニティに参加することができます。

木村先生「核家族化などの要因で社会が狭まり、高齢者が同世代と話す機会が少なくなっている今、交流の場のひとつとしても運動を取り入れてほしいと思います」

筋トレに年齢はなし!」を合言葉に、今日から運動をはじめましょう!

散歩の途中で追加する筋トレのオススメはこちら
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