2021/05/12

運動部ならエネルギー不足に注意!10代までのスポーツ少年少女の食事の基本3STEP

思春期のお子様、特に部活などでスポーツを頑張っている学生さんがいらっしゃるご家庭で、一度は話題になるであろう、「食事」。
「作っても作っても足りない!!」「学校帰りにラーメンを食べて帰ってきたのに、また夕食も食べるなんて……」というお悩みもあれば、
「運動しているのに、太るのを気にしてサラダばかり」「朝食を抜くのが癖になっている」などなど、さまざまだと思います。

今回は、そんな食事に関わるお悩みを解決するため、成長期のアスリートが摂るべき栄養素についての基本をわかりやすくお届けします。
スポーツ医学総合センター訪問研究員の伊藤恵梨先生にお話を伺いました。

伊藤恵梨(いとう・えり)

慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター所属
2011年高知大学医学部卒
2013年慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター入局
2021年慶應義塾大学大学院博士課程 医学研究科修了
日本整形外科専門医、日本スポーツ協会認定スポーツドクター、日本障がい者スポーツ医、IOC Diploma in Sports Medicine
慶應義塾大学體育會女子バスケットボール部チームドクター
スポーツ選手や愛好家のケガだけでなく、全身を診られるような医師を目指し、婦人科や東洋医学の研修、若年者の骨粗鬆症に関する研究を行っている。



はじめに、スポーツに取り組む成長期の子どもが適切に栄養を摂取するための3ステップをご紹介します。

1.しっかりカロリーを摂り、エネルギーが不足しないようにする。
2.朝食を食べ、運動前には補食(間食)を挟むなど、こまめに栄養補給をする。
3.1日の食事全体のバランスを考え、主食や補食の内容を検討する。

ひとつずつ見ていきましょう。



「カロリー=太る」は間違い!?運動をするならエネルギー不足に注意

まず、運動部で毎日スポーツを頑張っている成長期の子どもたちが、食事において最も気を付けるべきこととは一体なんでしょうか?

意外かもしれませんが、なによりもしっかりとカロリーを摂ることが大切です。
カロリーと聞くと、「太ってしまうのでは……」と不安に思われるかもしれませんが、成長期のアスリートの場合はそんな心配は無用。むしろ、エネルギー不足に気を付けなければいけないのです。

そもそも、カロリーとは何かご存じでしょうか。
カロリーは、エネルギーの単位です。エネルギーとは人間が活動するために必要なもので、三大栄養素といわれるたんぱく質、炭水化物、脂質によって作られます。
それぞれの栄養素につき、1gあたりに含まれるエネルギーは異なりますが、例えばたんぱく質を1g摂ると4kcalのエネルギーを摂取できます。
つまり、三大栄養素から摂ったカロリーの合計が、活動のためのエネルギーになるということです。

では、成長期にスポーツに取り組まれている方は、どんな場面でエネルギーを使っているでしょうか。

①基本的な生きていくための活動
②スポーツ
③体の成長

このうち①はスポーツに取り組んでいない大人も必要なものです。しかし、成長期のアスリートは②と③でもエネルギーを消費します。
①の分しか摂取していなければ、エネルギー不足になってしまうのです。

カロリーという言葉を聞くとすぐに「太るもの」「たくさん取ってはいけない」とダイエットに結び付けてしまいがちですが、まずは「活動のために必要なものである」と意識してみましょう。
そのうえで、適切なエネルギー摂取ができているかどうかを確認するためには、成長曲線を見てみましょう。健康診断で測った身長体重と、診断時の年齢をグラフにつけていき、標準の範囲であれば問題ありません。数字を入力すれば自動で表示してくれるウェブサイトもたくさんありますので、気になる方は試してみてください。

「成長曲線」―厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/02/dl/s0219-3b.pdf



朝ごはん抜きは厳禁!「ちょこちょこ食い」でこまめな栄養補給を

もう一つ重要な点は、成長期の子どもの場合は胃が小さく、一度に摂取できる量が少ないということです。そのためできるだけこまめに食べることで、1日全体でしっかりエネルギーを摂るようにしましょう。
とはいえ、授業中にモグモグと食べているわけにもいきませんよね。

摂取量を補うには、まず朝ご飯をしっかり食べましょう。睡眠中にも脳は活動しているため、寝起きはエネルギーが不足しがち。エネルギー補給ができる絶好のタイミングと考え、朝ご飯を抜かないようにしましょう。
そして、可能であれば部活などの運動前に補食(間食)を挟みましょう。運動のためのエネルギーを補給することができます。
間食というとおやつのイメージがありますが、できれば甘いものよりも、栄養バランスを取りやすいおにぎりやパンなどがオススメ。さらに具に肉や魚といったたんぱく質が含まれているとなお良いでしょう。



食事が偏らないためには「食事バランス」を意識

ここまで読んでいただければ、エネルギーをしっかり摂ることの重要性をお判りいただけたと思います。
とにもかくにも、まずは食べることが大事!!ですが、ちゃんと食べている方が次に気になるのは、その中身ではないでしょうか。
「油ものばかりじゃさすがに良くないよね?」「栄養素が多すぎて何をどれぐらい摂ったらいいかわからない……」という疑問を解決するためには、「食事バランス」を意識してみてください。
栄養バランスを整えるために、たんぱく質・ビタミン・カルシウム……とひとつひとつ考えていくと、頭がこんがらがってしまいます。しかし食事バランスの考え方では、5つの料理グループを揃えるだけで、必要な栄養素をきちんと摂ることができます。

【5つの料理グループ】

①主食(ごはん、パンなど)
②副菜(野菜など)
③主菜(肉・魚など)
④乳製品
⑤果物

これらを一食ごとに全て完璧に食べる必要はありません。1日全体を通してバランスが良くなるようにします。
先ほど登場した補食(間食)も食事バランスから考えてみましょう。
例えば朝と昼に果物が摂れていないなら果物を、乳製品が不足していればチーズ入りのおにぎりやサンドイッチを食べるということです。
詳しい食事バランスの図は、農林水産省のサイトをご覧ください。食べる量の目安もわかります。

「食事バランスガイド」について―農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/index.html



成長期のアスリートの食事Q&A

それではここで、成長期あるあるの疑問にQ&Aでお答えします。

Q.スポーツをすごく頑張っていて、しっかり食べていても疲れ切っているようです。サプリなどで栄養補給したほうが良いでしょうか?

A.他の健康状態に問題がない場合は、運動量が多すぎるのかもしれません。ちゃんと食べていれば、サプリなどで補わなくても十分栄養を摂取できているはず。様々な要因で、一人ひとり運動量のキャパシティは異なります。あまりに運動しすぎると怪我のリスクもあるため、コーチやトレーナー、医師に相談の上、運動量を減らすことも考えてみましょう。

Q.子どもが唐揚げなどの油ものばかり食べたがります。カロリーが必要とはいえ、良くないでしょうか?

A.食事バランスは大切です。しかし、大人にとってちょうどいい食事は、成長期のアスリートには足りません。また、子どもの方が運動時に脂質がエネルギーに変換されやすいといわれています。一度に摂れる量も少ないので、高カロリーな食べ物も上手く使い、十分なカロリーが摂れることをまずは目指してから、1日全体のバランスを考えるようにしてみましょう。

Q.運動前の間食は、カップ麺でもいいのでしょうか?

A. 先ほど補食(間食)におにぎりやパンをオススメしましたが、カップ麺はリンの含有量が多い食品の一つです。リンは様々な食品に含まれており、バランスよく摂ればカルシウムと一緒に骨を強くしてくれますが、摂りすぎると反対にカルシウムの吸収を妨げます。カップ麺ばかりを食べるとリンが過剰になりやすいため、毎日食べるといった極端な摂取はやめましょう


適切な栄養摂取のための3STEPでパフォーマンスアップ!

最初にご紹介したスポーツに取り組む成長期の子どもが適切に栄養を摂取するための3ステップをもう一度振り返ってみましょう。

1.しっかりカロリーを摂り、エネルギーが不足しないようにする。
2.朝食を食べ、運動前には補食(間食)を挟むなど、こまめに栄養補給をする。
3.1日の食事全体のバランスを考え、主食や補食の内容を検討する。

子どもの成長はそれぞれ。周りを見れば見るほど、これでいいのかな?と不安になってしまいますよね。
また、特に女子は、太ることを心配しすぎるあまりエネルギー不足に陥りがちです。
迷ったときは3ステップを思い出し、時々成長曲線をつけてみてください。
丈夫な体作りでパフォーマンスを上げて、スポーツを目いっぱい楽しみましょう!

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