2020/10/30

家庭のスポーツ医学:肉離れの原因から応急処置、予防方法まで

冬の気配が近付いてきましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルスの影響により、寒くても屋外でスポーツを楽しもう!という方も多いですよね。

今回のテーマは、寒い季節に特に気をつけてほしい怪我のひとつ、「肉離れ」。
みなさんも一度は聞いたことのある名前だと思います。
「筋肉が冷えるとなりやすそう」「とにかく痛そう」というイメージがありますが、実際は一体どんな怪我なのでしょうか?
今回は、肉離れの原因、さらに応急処置や予防の方法まで、スポーツ医学総合センターの世良泰先生に解説していただきました。

世良 泰先生

慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター助教
TWOLAPS TRACK CLUB チームドクター、日本陸上競技連盟 医事委員会委員
2012年慶應義塾大学医学部卒業
日本整形外科学会専門医、IOC Diploma in Sports Medicine(国際オリンピック委員会認定ドクター)、日本内科学会認定内科医、日本スポーツ協会認定スポーツドクター、日本障がい者スポーツ医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本医師会認定産業医




肉離れとは? 何が起こっているの? 肉離れの仕組みと原因

そもそも、肉離れとはなんでしょうか。

世良先生「肉離れとは、筋肉の部分断裂です。筋肉が収縮するときに無理な力がかかって、筋線維が切れてしまうことを言います」

想像するだけで痛くなってきますが……少し我慢して、肉離れの仕組みを考えてみましょう。

筋肉の収縮にはいくつか種類がありますが、今回注目したいのはこの2種類です。

求心性収縮:力こぶができるように、筋肉が短くなって力を発揮する
遠心性収縮:腕を伸ばすときのように、筋肉が伸びながら力が入っている

たとえば、力こぶを作るイメージで、二の腕の上腕二頭筋に力をいれて腕を曲げてみてください。
力こぶができる=上腕二頭筋が短くなって収縮=求心性収縮しています。
次に、その状態からゆっくり腕を伸ばしてみましょう。
上腕二頭筋が伸びながらも力が入っているのがおわかりいただけるでしょうか? これが遠心性収縮です。
筋肉は、曲げて収縮させたときだけではなく、伸ばした時にも力が入っているのです。

本来、筋肉は短くなって力を発揮します。
しかし遠心性収縮のときは、伸びながら力が入っているため、負担がかかります。
その結果、遠心性収縮をしているときに筋線維を損傷=肉離れを起こしやすくなります。
筋肉に力が入っている時に無理に伸ばそうとして負担がかかり、筋線維が切れてしまう」これが肉離れの正体です。

世良先生「筋肉にもいくつか種類があり、羽状筋という種類の筋肉は肉離れを起こしやすいと言われています。ハムストリングスなどがそうですね。走ることの多いスポーツではハムストリングスに肉離れが起こることが多く、中高年の方になるとふくらはぎが多くなります」


肉離れはどんな時に起こるの?

では、肉離れを起こしやすい場面、運動中に特に気を付けたほうがいい場面はあるのでしょうか?

世良先生「遠心性収縮が起きているからといって、普通に運動していていきなり肉離れになるということはありません。ふとしたとき、思い切り頑張っているときに負担がかかるとなりやすいです。例えば、陸上ではゴールシーンでハムストリングスの肉離れを起こすことが多いです」

ゴールの時にハムストリングスの肉離れが起きるのは、どうしてなのでしょうか?
ハムストリングスは、腿の裏側に、股関節と膝関節という2つの関節を跨いでついている筋肉です。
ハムストリングスが働くと股関節が伸び、膝関節が曲がります。
その逆の動き、つまり股関節を曲げて膝関節を伸ばすと、ハムストリングスが伸びます。

ヨガで行われるポーズのひとつ。股関節が曲がり膝が伸びる=ハムストリングスが伸びている。

ゴールシーンでは、足を着くときに膝が伸びた状態で上体を前に倒すことで股関節が曲がります。
そのため、ハムストリングスが無理やり伸ばされてしまい、肉離れを起こすのです。


肉離れかも!?と思ったら確認したい痛みのチェックポイント3つ

肉離れは、どんなに気を付けていてもふとしたときに起きてしまう可能性があります。
筋肉に痛みが走り、「これって肉離れかも……?」と思ったとき、どうしたらよいでしょうか。

なによりもまず、痛みを感じたらできるだけはやくお近くの整形外科を受診してください!
「放っておいたら治らないかな」 「『安静にしてください』と言われるだけかもしれないし……」と思いがちですが、検査をきちんと受けることが大切です。
とにもかくにも病院へ行きましょう!

とはいえ診察を受けるまで、自分の体に何が起きたかわからないというのは不安ですよね。
診察前のセルフチェックとして、肉離れを疑った方が良いポイントは、この3つです。

・痛みを感じた時にブチッと音がした
・痛みが筋肉全体ではなく一点にあり、そこを押すと痛い
・ストレッチしようとすると痛くて伸ばせない

このような痛みの場合は肉離れを起こしているかもしれません。
逆に、痛みが筋肉全体にあるときや、ストレッチが可能な時は、筋肉痛など他の状態である可能性もあります。
診察の際に、このポイントを医師に伝えてみてくださいね。


応急処置のやり方は? 肉離れのときは “冷やして圧迫”

肉離れかもしれないと検討をつけたら、診察までの間に自分でできる処置はなんでしょうか?
冷やすか温めるか悩むことも多いと思いますが、肉離れの場合は「冷やす」ことです!
あわせて、患部を「圧迫」してください。

世良先生「筋線維が損傷したときは、中で出血しています。止血するため、冷やして圧迫することが大切です」

ちなみに、怪我をした際の応急処置にRICE処置というものがあります。
安静(Rest)・冷却(Ice)・圧迫(Compression)・挙上(Elevation) の頭文字をとったもので、応急処置の基本となります。
肉離れ以外のさまざまな怪我にも使えるので、部活動やサークルなどで運動習慣のある方は、ぜひ覚えてみてください!


予防にはストレッチが効果的! 怪我の仕組みを理解して肉離れになりにくい体作りを

肉離れは不意の動作で起こってしまうもの。
完全に予防するのは難しいですが、できるだけ起こりにくい状況をつくるために、日頃からストレッチをして筋肉を柔らかくしておくことが大切です。
固くなった筋肉は、よくストレッチされた筋肉に比べて伸びにくく、切れやすいと言えます。
スポーツをされている方なら、運動後にストレッチをするのに加えて、運動前に体を温めておくことも効果的です。
これからの寒い季節、筋肉はますます固まりやすくなります。
冬は特に入念に体を温め、筋肉をほぐしてあげることが大切ですね!

世良先生「なぜ肉離れが起こるのかがわかれば、防ぐために何をしたらいいのかもわかりますよ!」

肉離れの原因を理解して、体に無理のない運動を心がけましょう!


まとめ

・肉離れの原因は筋肉を伸ばした時に無理な力がかかること
・肉離れかもと思ったら、痛みを観察して病院へ!
・応急処置は「冷やして圧迫」
・普段から念入りなストレッチで予防を!

そして何より、肉離れかどうか分からないときも、痛みがあったら病院へ行きましょう!


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