2021/03/18

成長期の野球肘・野球肩に注意!治療期間の過ごし方と予防法

最近は暖かい日が多く、過ごしやすくなってきましたね。
4月を目の前にして、新しい季節を迎える気持ちも盛り上がります。
コロナ禍とはいえ、学校もはじまり、新入生の方は部活に入る方も多いでしょう。

今回のテーマは、「成長期の小学校~高校までの青少年に気を付けてほしい野球肘・野球肩」。
野球肘・野球肩という呼び名は、甲子園での投球制限で話題になりましたね。
しかし、実はこれはひとつの怪我をさす言葉ではありません。
中でも特に成長期に注意すべき野球肘・野球肩について、スポーツ医学総合センターの山田唯一先生にお話を伺いました。

山田唯一(やまだ・ゆういち)先生

慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター助教
慶應義塾大学体育会野球部チームドクター
NPO法人さいたまスポーツメディカルサポート副理事長
2014年浜松医科大学医学部卒
日本医師会認定スポーツ医



野球肘・野球肩って何?

野球肘や野球肩と聞いたとき、どんなイメージが浮かぶでしょうか。
実は一口に野球肘・野球肩と言っても、発生する部位などによって、さまざまな種類があります。
その中でも今回、成長期のお子様に気を付けていただきたいものとして、肘の内側に起こる「上腕骨内側上顆障害」と、外側に起こる「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)」をご紹介します。

肘の内側の「上腕骨内側上顆障害」は、投球によるストレスで成長期の子どもにある、骨端線(成長軟骨)と言われる軟骨層が開大する、または骨が引き剥がされることで起こります。早い段階で痛みが出るため、比較的症状に気づきやすく、投球をしばらくやめる、適切な安静期間を設けることで多くの場合治癒します。

対して、肘の外側に起こる「上腕骨小頭障害」は、初期の段階では痛みが出ません。症状が進行していくと、骨軟骨の傷ついている部分がはがれていき、遊離体ができてしまいます。痛みが出るときには重症化しており、手術を受けなければ治らないほどに悪化してしまいます。

肩の場合は、「上腕骨近位骨端線離開」が挙げられます。これも上腕骨内側上顆障害と同様に、肩にある骨端線が投球ストレスによって開大することによって発生します。

多くの場合、投球のし過ぎや間違ったフォームのせいで、肘や肩に過剰な負担がかかることが原因となります。


野球肘・野球肩と診断された!治療期間に気を付けるべき3つのこと

野球肘や野球肩と診断されたら、病院で治療方針についてしっかり聞いておきましょう。
手術にならず、保存療法で治すことになった場合、治療期間中に気を付けてほしいことは次の3つです。

1.治るまでしっかりと休むこと
2.可能な練習は続けること
3.周囲がしっかりとサポートすること

1と2は一見矛盾しているように思えますが、この2つのどちらも重要です。そして1と2を行うためには、3.周囲のサポートがとても大切になってきます。

治療にあたっては、何よりも第一に、投球を休んでください。初期の段階では、保存療法で治すことができますが、無理に投げ続けてしまってはまた悪化してしまいます。「自分は大丈夫だろう」と思ってしまうかもしれませんが、かかりつけ医の指導を守りましょう。

そしてもう一つ心がけていただきたいのは、患部を傷めない範囲でチームに参加することです。治療のために練習に長期間全く参加できないと、どうしても焦ってしまったり、チームに所属している意識が薄れて不安になることもあります。どの程度参加するかどうかは、かかりつけ医と相談し、チームの指導者の方とも話し合っていくようにしましょう。

ただし、患部が修復されるまでしっかりと休息期間をもうけ、安静にすることが最も大切です。子どものころに起こった障害や変形は、後の長い人生に大きな影響を及ぼします。これからの野球人生を、長い怪我との闘いにしてはいけません。
投球を含む練習を始めるのは、多くの場合痛みがなくなってから。負荷の低い練習から段階的に復帰していくことになります。
近距離での軽いキャッチボールなど、復帰のスタート地点となるメニューをかかりつけ医や指導者の方と一緒に決めていきましょう。その際、「痛みが出たらやめる」という意識を持ち、周囲にも伝えておくとよいでしょう。

早く元に戻りたいからと無理をすることのないように、周囲がよく観察し、サポートすることがとても大切です。同時に、子どもが患部に異常を感じたときに、保護者の方や指導者に相談しやすいような関係性を普段から築いておきましょう。


野球肘・野球肩にならないための予防法

それでは、野球肘・野球肩を予防し、重症化を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか?
特に取り組んでいただきたいのは、この3つです。

1.休息期間(オフシーズン)をもうけ、肘・肩を休めること
2.柔軟性を高め、正しいフォームでの投球を心がけること
3.定期的な健診を受け、早期に発見すること

肘・肩を傷めるのは、投球をし過ぎていることが原因の一つでした。そのため、オフシーズンをもうけて休息することは効果的な予防法です。
練習熱心で野球の大好きなお子様ほど、「無理をしないように」と言っても難しいもの。オフシーズンという形を取っておけば、オンシーズンとは違う練習をする意識を持ちやすいでしょう。別の競技をしてみたり、肘や肩に負担のかからないような練習をして、試合に活きる体づくりを目指していくのがオススメです。

また、体が硬いために、間違ったフォームで投球をしてしまい、怪我をしやすくなっているかもしれません。
成長期は、骨が速いスピードでぐんぐんと伸びていきます。しかし、そんな骨の成長に筋肉が追い付くことができず、骨に引っ張られてしまい、体がどうしても硬くなりやすいのです。
体が硬いと、投球の際に下半身を正しく使うことができず、肘や肩に極端に負担がかかってしまいます。
そのため、毎日のストレッチで柔軟性を高めておき、フォームの矯正をしていくことも障害予防につながります。

さらに、早期で発見し重症化を防ぐためには、医師の健診を受けましょう。
初期の段階で見つけるには、エコー(超音波)による検査が有効です。また、一度受けたら終わりではなく、定期的に受診することが必要です。
早く発見できれば、保存療法を適切に行うことで治すことができます。


「自分もなるかもしれない」と意識して、怪我に備えた環境作りを

そして何より、覚えておいていただきたいのは、野球肘・野球肩には誰もがなる可能性があるということ
その意識があるだけで、先ほどお伝えした3つの予防方法に取り組みやすくなります。
指導者の方や保護者の方は、ぜひ誰でもなる可能性があることや、早く見つけることが何より大切なことを伝え、痛みや違和感があったときに相談しやすい環境づくりをしてあげてください。
「なるかもしれない」と思って定期的に医師の健診を受け、初期の段階で発見できるようにしておきましょう。




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